三峰結華は偶像の夢を見るか

 アイドルマスターシャイニーカラーズ(以下:シャニマス)が正式にリリースされて一年と一月が経った。

 19人のアイドルたちとの様々な様相を綺麗なイラストや惹き込まれるテキストと共に我々に届けてくれるこのゲームに筆者自身もアイドルマスターのいちファンとして日頃から夢中である。

 

 さて、このゲームにおいては様々な面からアイドルたちの表や裏に触れていくことができるのだが、皆様は各担当アイドルについてどのような魅力を感じているだろうか。

 今回はそんな魅力溢れるアイドルたちの中でも私が担当を名乗らせていただいているアイドル『三峰結華』について筆者が思うところを書かせていただこうと考えているので、もしよければ最後までお付き合いいただけると幸いだ。

 また、最初に断っておくが、この記事に関しては三峰結華の各カードのコミュ内容(Trueエンドやサポートカードも含む)が多く含まれている可能性があるため、所謂ネタバレを気にする方はこの辺でブラウザバックをお勧めする。

 

 

『一歩後ろから見えるもの』

 さて、三峰結華というアイドルを掘り下げていくうえでまず欠かせないのが、「L'Antica」というユニットの存在である。

 シャニマスの特徴は何と言ってもユニット単体での活動だ。現在女性アイドルが活動するアイドルマスターシリーズはこのシャイニーカラーズを除く全てのゲームで楽曲やイベントごとに様々なアイドルがユニットを入れ替えながら活動している。

 その中で当然ながら自分と似たようなキャラクター、自分とは正反対の性格や容姿のキャラクター、年齢の差異、様々な差や自分との経験の差を感じながらそれを自らの糧とすることで成長していく様を描かれていることが多い。

 では、シャニマスにおいてアイドル間の関係性を見るのは何処になるのか、それはユニットメンバーとのやり取りを見ていくに他ならない。

 今後ユニットメンバー外との交流(クリスマスコミュやピクニックコミュ等)が増えていくにつれ更にキャラクターの魅力が掘り下げられていくことを考えると楽しみでならない。

 が、現在ユニットメンバーとの会話が詳細に語られているのは現状ユニットイベントやサポートカードでのテキストのみでの確認となっているのでそちらを軸に考えていきたい。

 

 三峰結華担当プロデューサー、また他担当プロデューサー各位は三峰結華についてどんなイメージをお持ちだろうか。

 コミュに目を通した方であればまず思うのは彼女は所謂「周囲に気を遣う子」であるということだ。

 では、なぜ彼女はそんなに一歩引いた場所から周りを見渡すようなポジションに付くようになったのだろうか。

 もしこれが各ユニット担当プロデューサーには語弊が無いように伝えたいが、イルミネーションスターズの三峰結華でも、放課後クライマックスガールズの三峰結華でも、アルストロメリアの三峰結華でも、ストレイライトの三峰結華でも、彼女は今のような一歩引いた位置からユニットメンバーを見守るようなポジションに落ち着くのではないだろうか。

 

 そんな三峰結華がなぜそんな一歩引いた場所から同じユニットのメンバー達を眺めるようになったのか、これは私の推測だがきっと彼女は上京してこちらでアイドル活動を始める以前からそのようなポジションに居たのではないだろうか。

 周囲に気を遣って、おどけた態度でまわりを時にからかったり、決して本音を常にひけらかす態度ではないが時折ぽろっと零す彼女の本心。そんな掴みどころのなさそうな人間関係に見ることのできる彼女の態度に惹き込まれたプロデューサーも多いのではないだろうか(現にここに一人いるのだ)。

 では、彼女がなぜそんな態度を周囲に取るのか。それに関してはpSSR【それなら目をつぶりましょう】三峰結華のtrueendにて若干の詳細が描かれている。

 プロデューサーに自分の苦手なことをぽつぽつと話す三峰。

  そんな彼女は会話の中でこう零すのだ。「……で、今みたいに自分勝手に話すくせして、最後まで踏み込めないように自分から一歩引いちゃうのとか……ずるいなって、思うの。……ね、もう踏み込めないでしょ?」と。

 苦手なことを語る流れで踏み込まれることの話をする、つまり三峰結華にとって自分の心に踏み込まれるのが苦手だと彼女は述べているのだ。

 ここで彼女がなぜ周囲から一歩引いた位置でメンバーやプロデューサーへと接してくるのかが見えてくる。

 彼女はただ自分の心の超えて欲しいラインを誰かに踏み込まれたくないのだ。そんな風にして作ってきた一線を、こうして今回のpSSRでプロデューサーへと口にするのは、この一年間で積み上げてきた彼女からプロデューサーへの信頼の結果だといえるのではないだろうか。

 

 そしてこれは感謝祭編での彼女の言動からも読み取れる。アンティーカがバラバラになっていくことを一人不安に思う咲耶。彼女に対して三峰はこう声をかけるのだ「取り返しのつかないことになっても遅い」と。これは過去に結華の親しい知人がこうなってしまったのか、はたまた結華自身がそうなってしまったが故か。

 親しい人がそうなってしまう、もしくは自身がそうなってしまうのが怖くて距離を作っていた結華が、アンティーカというユニットを通して改めて誰かと向き合おうとするその様。彼女が本音をぶつけることが出来る相手がユニットのメンバーだということが、この一年間彼女達が結んできた絆がある故なのではないだろうか。

 他ゲームのユニットが出会いを生むのなら、シャニマスのユニットは一緒の時間を作ってくれるのだ。

 

 そしてファン感謝祭編で彼女はプロデューサーにこう語りかける。「知られたくないものは知られたくないし、見せたくないものとか絶対隠しておきたい」と。彼女の過去に何があったかまでは現状推測することは出来ないが、彼女がリリース当初から見せるスタンスは変わらないまでも、その心を少しずつこちらに開いてくれるようになったのは1年という積み重ねゆえだろう。

 また、彼女はその後にこう語る。「……三峰も、見抜かれることを許しているわけで。今はそれで一旦おっけーしてほしいなー、なんて思ったりしちゃいます」と。コミュから垣間見える彼女の言動から少しずつ見える彼女の本心。そんな彼女の全てを今は知ることは出来ないが、今後知っていく過程も含めて、彼女のプロデューサーであることではないだろうか。

 

 

『スタートラインに立った君へ』

 ここからは彼女のもう一つの要素であるアイドルオタク三峰結華について掘り下げていきたいと思う。

 ここからは私自身の彼女への想いが文章の端々に現れると思うが、それは彼女を愛するが故の為ご理解いただけると幸いである。

 

 さて、「夢が叶う」ということがどれだけ難しいことか読者の方なら一度は感じたことがあるのではないだろうか。小さいころから憧れていた職業に就く、スポーツやコンクールなどで1位を取る。それは並大抵のことでは成しえない快挙と言えるだろう。

 三峰結華もそんな快挙を成し得た一人である。アイドルに憧れていた少女がいつしか憧れたアイドルたちと同じステージに立つようになる。この魅力こそ彼女の複数ある大きな武器の一つではないかと私は考える。

 アイドルが好きなアイドルというのは他のアイマスシリーズにも存在する。所謂一種の伝統的なところである。が、前述の彼女の周囲との距離感を考えると、そこにもう一つの面が見えてくるのではないだろうか。

 それは、彼女は憧れるだけで最初から憧れに近づきたかったわけではない。

 とあるシアターのアイドルは、彼女がアイドルになりたいと思った理由をこう語る。

「アイドルみたいにキラキラ輝けたら」と。アイドルにお近づきになりたい、などと聞こえたところはきっと読者の気のせいだろう。

 しかし三峰結華はそう口にはしない。

 彼女は19歳。夢を語るだけじゃ人生甘くないとしっかりと理解できる年齢であろう。ましてや彼女のことだ。夢は夢で終わってしまう、そう結論付けることだってあるだろう。しかし彼女はプロデューサーから声をかけられるという偶然の出会いから憧れた世界へと足を踏み出すことになる。

 

 彼女はWING編のシーズン1突破後にこう口にする。「三峰でもちゃんとアイドルやれてるし、まわりの人からも許されてるんだなって思えて、嬉しくて」と。許されているとはなんだろうか。夢を追いかけることは誰かの許可が必要なことなのだろうか。

 実はこのセリフ、三峰自身が周りの人というフィルターを通して自分のことを見つめた台詞なのではないだろうか。そう私は考えた。夢を追うという選択肢を取った自分、それをオーディション通過という結果を通してやっとその選択をした自分を間違ってないぞと言い聞かせるような、そんな台詞なのでは。

 

 そんな彼女はWING編シーズン3突破後にはこんなセリフを語るのだ。「でもさ、ここで満足なんてしてられないよね。ここまで来たら、絶対『W.I.N.G』に出てやらないと。…………私が、ちゃんとしたアイドルになれるように」と。彼女の言うちゃんとしたアイドルというのがどのようなアイドル像なのかは具体的なところは明言されていないが、きっと彼女の中にはそのちゃんとしたアイドルがいるはずだ。

 キラキラの舞台で、ファンの声援を一身に受けて、笑顔で歌って踊っている誰かが。

 そんなアイドルに彼女は近づこうとしている。自らの夢を自信に変え、そしてその自信を原動力に彼女は理想へと踏み出そうとしているのだ。彼女の夢はアイドルになることではない。彼女が理想とするアイドル像になることが、三峰結華の夢なのだ。彼女はまだ、そのスタートラインに立ったに過ぎないのだ。

 

 アイドルマスターというゲームは、アイドルになるという夢を叶えるところから始まる。全てのアイドルが、出会ってすぐにアイドルになるところからスタートする。それまでにどんな出来事があったのか、それを詳しく知ることは出来ないが、等しく彼女らや彼らからはアイドル活動を通してその信念を感じることが出来るだろう。そんな信念の中で過去の憧れを原動力に変え、そして今を走る彼女の力強さが三峰結華という少女の一番の魅力なのではないだろうか。

 

 「憧れは理解から最も遠い感情だよ」と、某五番隊隊長は口にする。三峰結華は知ろうとしているのだ。憧れのあの子と一緒の舞台から見える景色を。そしてその先にある世界を。

 

 そんな彼女は、今もアイドルという夢を走り続けている。覚めない夢のその先で、彼女が目指す世界の為に。

 

 これは私事なのだが、自身も一度夢を追いかけ挫折したことがある。才能も運も恵まれず、それによってぽっくりと折れてしまったのだ。だからこそ夢を追い続ける彼女に私は夢を見るのだろう。自分とは違う選択肢を追いかける彼女が、あまりにも眩しく見えてしまうのだ。そんな、私が憧れた世界を追い駆け続ける彼女の夢の行きつく先を応援し続けていきたいと私は強く思う。彼女が倒れそうなときに、しっかりと背中を支えてやりたいと。「……いつか、三峰が思う理想のアイドル」になれるまで。

 

 

『ラブソングはお好き?』

 さて、ここからは今まで以上に私の私見と妄想が入り乱れる文章になっているので聞き流していただけると幸いだ。

 ここでの話題はただ一つ、「三峰結華はプロデューサーのことが好きなのか?」の一点に絞る。

 

 そんなことはない、と声を大にして言いたいのだが、所詮アイドルマスターというゲームは突き詰めればギャルゲーである。というか765時代からしてあずささんの唇を奪えるんだからそりゃそうだ。

 ゲームの中の人物と言えど現代文の問題よろしく登場人物の心境なんて分かったもんじゃないし、ましてやコミュを書いているライターの気持ちなんて当人にしか分からないのだ。

 だからこそ憶測で語るのは自由なのではないだろうか。

 ということを前提に私は三峰結華がプロデューサーに抱いている感情は親愛ではなく信頼だと考える。

 

 彼女は至る所でプロデューサーに感謝の言葉を口にする。それはひとえに前述したように彼女が夢を追いかけるきっかけを作ったのがプロデューサーだからだ。

 今のところは彼女にとって理想のアイドルを目指すことが大前提で、そのきっかけとなったプロデューサーという信頼関係が存在するだけなのではないだろうか。

 それは彼女が【お試し/みつゴコロ】三峰結華においてプロデューサーのことを”兄さん”と呼び間違えることから伺える。

 彼女にとってプロデューサーは家族と同じぐらいに信頼できる存在なのだ。二人っきりの事務所、もし彼女がプロデューサーに恋心を抱いていたのならばそちらに意識が行ってしまいこんな呼び間違いも起こりえないだろう。これは三峰が普段からプロデューサーに対して恋心とは違うベクトルの、言ってしまえば家族との距離に近い存在を感じていたからに違いない。

 

 まぁ、いろいろと述べてみたものの急にイヤホン耳にぶち込んできたり名前で呼んだりするような彼女に全くそんな気持ちがないかと言われると筆者は黙ってしまうので触れないで欲しい。

 

 あえて弁明をするのならば、ユニットのところで触れたようにこれが彼女の周囲との距離の測り方なのではないだろうかということだ。あえておどけたりからかったりすることで相手の反応を伺いそこからどこまで踏み込めるのかを測る。もしこれが相手の琴線に触れてしまうようならふざけただけだと弁明する、これは彼女なりの一種の保険のかけ方なのだ。

 

 ギャルゲーにはエンディングというものが存在する。主人公と一人のヒロインがお互いに想いを伝えあって結ばれるというものだ。

 では、三峰結華の世界にとってエンディングとはどこなのであろうか。

 それはもちろん「三峰が思う理想のアイドル」になることだ。決してトップアイドルになることではない。もし彼女が理想の場所から世界を眺めた時、彼女は何を思うのだろうか。一緒に歩んできたプロデューサーへと恋心を抱く。それが彼女の夢のその先にある可能性の一つなのであれば、私はそれを嬉しく思う。

 

 さて、副題にも触れておこう。これは所謂私の勝手な妄想で、彼女のソロ曲でラブソングが聴きたいというだけのものだ。

 アイドルがラブソングを歌う。これは3次元の話でも2次元の話でもよくあることだ。

 歌に想いを込めて。

  さて、件の三峰結華がソロ曲でラブソングを歌うようなことがあればそこにどんな想いを込めるのだろうか。どんなメロディーで、どんな歌詞で、「好き」をどんなふうに発音するのだろうか。

 いろいろな経験をして、いろいろな想いを抱いて、リリース直後とはまた違うものが数年後に舞台の上で聞けて……なんてそんなことに思いを馳せるのも、案外悪くはないのかもしれない。

 

 

『夢が夢で終わらぬように』

 最後に、彼女への想いを短く述べさせていただく。

 容姿で好きになって彼女を知れば知るほどその繊細さに惹き込まれた。きっと彼女は自分と同じなんだと強く感じた。憧れがあって、茶化すような態度で本心を隠して、誰かとの心の距離で四苦八苦して……。

 だが、そんな彼女が自分と大きく違う点は、彼女は今憧れの先を目指して歩いているということだ。

 彼女は、夢を諦めなかった自分だ。彼女が理想のアイドルになれた時、きっと夢を諦めなかった世界線の自分も報われる。そんな気持ちが彼女の背中を押したくなる理由なのだろう。

 私は三峰結華というフィルターを通して、諦めなかった自分の行き先を見ているのだろう。

 彼女の夢が、そして私の夢が夢で終わらぬようにと。

 

 

 最後までお読みいただきありがとうございます。

 この文章は一介の三峰Pが駄文を垂れ流しただけのものになります。アイドルへの想いや解釈はプロデューサーの数だけありますので共感いただけない部分はネットの海にでも捨てていただけると幸いです。

 それでは皆様のプロデューサー活動が今後もより良いものであることを祈ってこの辺で筆を置かせていただきます。

 

 

 最後に一つだけ、三峰結華はいいぞ。